「そんな、単純な」
 
ただの食いしん坊じゃないか、それ。

「来たじゃん、ネコ」
 
たしかにそうだから、なにも言い返せないけれど。

「だったら、なんで最初からチョコレート持ってたんですか?」
「……聞くの? それ」
「聞きたいです」
 
しばしの沈黙。
言いたくなさそうなオーラを出しつつも、ようやく重い口を開くウソツキさん。

「遼平の妹だと気付かずに、アナタをここでずっと待ってたから」
「えっ?」
 
ガバッと顔をあげて、ウソツキさんの顔を見る。
そんな話は初耳だった。

「待ってた? なんで? いつから?」
 
ウソツキさんは観念したような諦めたような顔で続ける。

「六月末に、ここで寝ながら泣いてるネコを初めて見たの。その時は声をかけなかったけど、それから、来れる時は毎日のように同じ時間帯にここに通って」