クスクス笑うと、
「若いくせに高等技術を習得されているんですね、ネコさん」
と、鼻をつままれてしまった。

けれど、ウソツキさんの耳が少し赤くなっているのを見て、なんだかとてもいいものを見たような気持ちになる。

「チョコ、ください」
「はいはい」
 
いつものチョコを取り出して、ウソツキさんはひと粒、私の口に入れてくれた。
普通に指が唇に当たったけれど、それすらも甘い気がした。

「私に暗示をかけるの、簡単でしたか?」
「まだ言うの? 誤解だって言ってんのに」
「じゃあ、なんで毎回くれたんですか? チョコレート」
 
ウソツキさんは、面倒くさそうに大きなため息をついてうなだれる。

「口実だよ。モノでつれば毎日のように来てくれるかと思ったの。猫とか子どもみたいに」