「な、なんで?」
 
蕁麻疹は、出ていなかった。

「こっちが聞きたいっての」
「え? 本当に? なんで? なんで?」
 
気が動転して、ウソツキさんの頬に手をペタペタと押し当ててみる。

「ちょっ……おい、ネコ」
「だって!」
 
信じられない、ウソみたいだ。

にわかに受け入れがたい気持ちに遅れて、じわじわと喜びもこみあげてくる。
嬉しくて嬉しくて、大声で叫びたくなる。

「あれじゃないの? ネコが自分から触れたいって思ったからじゃないの?」
 
自分から?

「PTSD(心的外傷後ストレス障害)って人それぞれだと思うけど、ネコの場合はそういうのがネックになってたんじゃない?」
 
自分から触れたいって思えば平気ってこと?
 
夢見心地でウソツキさんの話を聞いていると、また引きよせられ、今度は頬にキスをされる。