「少しだけ……顔、離して」
 
正直言って、今、一番顔を見られたくなくて、ウソツキさんにしがみついたまま、フルフルと顔を横に振る。
泣いたことでぐちゃぐちゃになっているし、なにより、蕁麻疹が出ていたらと思うと、怖くて顔をあげられない。

「お願い」
 
大きな手で私の頭を撫でながら、再度言ってくるウソツキさん。

「嫌です」
 
そう言ってムキになって顔をうずめていると、
「ホントにめんどくさい女だね」
と言われて、ぐいっと無理やり顎をつかまれて上を向かされた。

「……っ!」
 
超至近距離にウソツキさんの顔。
両手で直に顔を覆われ、親指で涙をこすりながら拭かれる。
そして鼻と鼻が微かに触れたかと思うと、そのままゆっくり唇を重ねられた。

驚きすぎて目を見開く。
唇に感じる温かさとやわらかさ、その初めて感じる感触に、息をするのも忘れる。