「この子ね、ホワイトの“イト”ちゃ……」
「ウソツキさんっ」
 
猫の話をしようとするウソツキさんを遮って、私は意を決して、真正面から視線をぶつけた。

「なに?」
 
一瞬驚いたウソツキさんは、それでもまた淡々とした口調に戻って返事をする。

「さ、さわりたいです」
「イトちゃんに?」
「ウソツキさんに……直接」
 
体中が心臓になっちゃったみたいだ。
言いながら、全身が熱に侵されながら脈を打っているような気がした。

こんな気持ちになるなんて、今まで思ってもみなかった。
こんなに口に出さずにいられなくなるなんて、想像もつかなかった。
 
触れられないことが悲しい。
触れてもらえないことが悲しい。
触れたい。
さわってもらいたい。

流れる涙も拭かずに、顔もくしゃくしゃに歪んだまま、それでも想いを伝えたくて、懸命にウソツキさんの目を見る。