「はい、とりあえずあがって」
 
制服の袖を引っぱられて、くいくい、とされる。
私は半ベソをかきながらテーブルのある部屋に入り、クッションの上に腰をおろした。

ウソツキさんもその横に、五十センチほど離れて座る。
いつもより少しだけ近い距離に、切なくもこそばゆい気持ちになった。
 
そうだ、そういえば、さっき屋上で“好き”って言われたんだった。

改めて自覚すると、緊張のゲージがあがりだす。
そんな動揺を知ってか知らずか、首を傾けながら私の顔を覗きこむウソツキさん。

照れくさすぎて、私は微動だにできなくなった。

「なにもしようがないって遼平には言ったけど……ごめん、髪だけさわってい?」
 
うなずくと、ウソツキさんの指が、うつむいて前に流れた私のストレートの髪を梳いた。