「え? 上って言って……」
「五階も三階よりは上でしょ」
 
迷わずドアを開け、私の背中を軽く押すウソツキさん。

中に入り、廊下へあがるウソツキさんの背中を見ながら、私は玄関にたたずんだまま、
「は、入っていいんですか?」
と聞いてみた。

急なことに鼓動が速くなり、手にも変な汗をかいている。

「いいよ。もう覚悟決めたから」
「なんの?」
「ネコを手もとに置きながら、我慢して蕁麻疹が治るのを待つって」
「え?」
 
治るのを待つ?

「触れられないことより、会えなくなるほうがキツイってわかったから。ちゃんと自制する」
 
相変わらず、なんてことないようにさらっと言いのけるウソツキさん。
でも、その言葉は十分に信じられるものだった。

嬉しさが胸に滲み、また涙腺が刺激される。