エレベーターに乗りこむと、「こら、晃樹! 六時までには家に帰せよ、絶対!」と玄関のドアを開け直して叫ぶお兄ちゃんの声がしたけれど、ウソツキさんが即座に閉じるボタンを押し、ヒラヒラと手を振ったところでドアが閉まった。

「…………」
「いいお兄さんをお持ちで」
 
ちょっと疲れたようなウソツキさんは、はぁっ、と小さなため息をつきながら私を横目で見た。

「まだ疑う?」
「いえ……もう……」
 
ウソツキさんの言葉に私はごにょごにょと小さい声で答える。

彼女はいない、って言っていたのを信じなかったことが、今さら面目なくて仕方ない。
卒論にしても早とちりをしてしまって、はずかしすぎる、私。
 
そんな反省をしているうちに、五階に着いた。
屋上へ向かうとばかり思っていたけれど、ウソツキさんは自分の部屋の鍵を開けている。