ウソツキさんは、口を真一文字に結んだ不機嫌そうな顔でフェンスに寄りかかったまま、しばらく黙っていた。

そして、ゆっくりと一点を見つめて伏せていた目をあげ、
「……遼平?」
低い、今までで一番低い声で聞いてきた。

「遼平がそう言ったの?」
 
ウソツキさんのオーラがあまりにも怖くて若干たじろいだ私は、涙を垂らしたままで静かにうなずく。
 
それを確認するや否や、ウソツキさんは、フェンスからこちらにツカツカと歩みよってきた。
そして、いきなり私の腕をつかみ、扉のほうへ引っぱる。

「なっ、なにするんですか? どこにっ……」
「三○二号室」
「なんで、お兄ちゃんの部屋に」
「頭きた。もう、直接見て確かめろ」
「なにを?」
「うるさい」

屋上の扉を勢いよく開け、階段を早足でおり、エレベーターを呼ぶための下の矢印ボタンを強く押すウソツキさん。
眉間のシワがものすごく深い。