「ねー、ネコさ、彼氏いないでしょ?」
 
そのままの体勢で、だらーっとしながら当たり前のように言われる。
唐突すぎるし、失礼きわまりない。

「いないですけど。なんでですか?」
「あんだけ男に免疫がない反応されれば」
 
私はその言葉に、苛立ちよりも安堵を感じた。
“免疫がない”ってことで片付けてくれるんだ、さっきの私の態度。

「チョコレート、いる?」
「はい。今度はなにが入ってるんですか?」
「昨日と一緒。ネコの悩みごとが軽くなる成分入り。ひと粒食べるごとに幸せに近付けるチョコ」
「ハハ。やっぱりウソつきですね」
「本当だよ。これだけは」
「胡散くさいです」

私はもう一度笑って、チョコレートをひと粒もらって食べた。
お兄ちゃん以外の男の人の前でこんなに自然に笑えたのは、たぶん初めてだった。