パニックだ。
頭の中が散らかって、お兄ちゃんが今言ったことを理解するのに時間がかかる。

かろうじて小学校の時の記憶を手繰りよせ、必死に思い出そうとした。

小学校高学年。
高校生のお兄ちゃんの友達。
玄関。
整った顔。

「…………」
 
あいさつ……した、たしかに。
ああ、あの顔……あの時の顔は……。

「……っ!」
 
口を手で覆う。
ウソツキさんを最初見た時に見覚えがあると思ったのは、だからだったんだ。

「お、お兄ちゃん。もしかして、私のこと話したりした? 晃樹さんに」
「美亜のこと? ……って?」
「私の過去のこととか、蕁麻疹のこととか」
 
お兄ちゃんはしばし考えて、あっ、という顔をした。

「あー、高校の時に相談したかも。俺もその頃は結構悩んでたし、美亜のことも心配だったから。ごめん、まずかったか?」