私は壁に背中をつけたまま、ずるずるとその場にへたりこんでしまった。
片腕はまだ握られていたから、不格好な体勢のままで。
 
外から雨が降る音が響く。
サァ……と、とても静かで繊細な音。

上から私を見おろすウソツキさんは、その雨音と同じようなトーンで、
「彼女はいないし、ネコを家にあげたくないのは、自分を抑えられる自信がないからだよ」
と、言った。
 
ふっと握る手を緩められ、私の腕はへたりこんだ足の太ももの上にぱさりと落ちる。
顔をあげると、立っていたウソツキさんのほうが私の目線と同じ高さにまで、しゃがみこんでおりてきた。
 
真正面、少し眉をさげて微笑むウソツキさん。
私はどう言葉を返せばいいのかわからずに、その目をじっと見る。

「泣いてんのに、指で涙を拭いてあげることもできないね」