「雨宿りしていきませんか?」
「結構です」
「そう言わずに。チョコレートあげるから」
「いりません」
 
五メートルくらいの距離があるのに、ウソツキさんが小さく鼻でため息をついたのが聞こえた気がした。

そして次の瞬間、彼は大股で一歩前に出る。
軒もなく、雨がそのまま当たる場所に。

「なにして……」
「あー、このままじゃ、びしょ濡れになるわ、俺」
「一歩下がればいいじゃないですか」
「誰か傘に入れてくれないかなー」
 
私の言葉を無視して、そのまま、ただただ雨に濡れているウソツキさん。
小雨だけど、だんだんウソツキさんの服に滲みはじめ、髪の毛からも水滴が落ちはじめる。
 
意味がわからない、子どもみたい。
そう思いながら、仕方なく近くまで行って傘を差しだす。
少し体が引けて、私のほうが背中を濡らしてしまった。