「ねぇ、ネコ。昨日会った時思ったんだけど、アンタさ、以前俺と会ったこと……」
「ネ、ネコって呼ばないでください。ちなみにアンタとも」
 
あまりに不躾な彼に、ちょっと噛みついてみる。
ほんの少し驚いた顔をした彼は、すぐに鼻で笑い、飄々とした顔に戻ったけれど。

「じゃあ名前、なに?」
「た、種田美亜」
 
名前を言うと、彼は一旦停止して私を凝視した。
妙な間があく。

「種田……なに?」
「美亜」
「も一回」
「美亜」
「ふはっ」
 
クックッと肩を揺らしながら、笑いを噛み殺す彼。

「ネコじゃん、やっぱ。ミャアーって鳴いてるみたい」
 
抑えきれなかったのか、ふきだすように笑いながら反対方向を向き、「腹いてぇ」と言って涙を拭く真似をしている。

私はカーッと顔に血が集結して、
「ひ、人に聞いたんだったら、自分も名乗るべきですっ」
と、勢いに任せて怒鳴ってしまった。