「もう、いいです! ウソツキさんの言うこともやることも、なにも信じられないっ」
 
半分勢いで立ちあがった私の腕を服越しに引っぱり、ウソツキさんはぐいっと自分のほうへと引き寄せた。
思わずバランスを崩した私は、ベンチに雪崩れるように片手をつく。

強い力で握られたままのもう片方の腕。
気付けば、ウソツキさんの顔が鼻と鼻が触れそうなほど間近にあった。

「……っ」
 
止まった空気に思わず目をつぶる。
私の前髪に、ウソツキさんの前髪が触れた。
唇にウソツキさんの息がかかって、傾けられた顔の近さが嫌でもわかってしまう。
 
胸が痛い。
でも、なぜか逃げたくもない。
そう思った途端に、ふっと離れた気配。