「ずるい……ウソツキさん」
 
こんなことされたら、嫌でも期待してしまう。

「なにが?」
「なんで、そんな思わせぶりなことするんですか?」
「そう思うの? 自覚あるんだ」
 
ほら、だから、そういう言い方がまた、私を翻弄するんだ。

「……彼女、いるのに」
 
絞り出すようにそう言うと、少しだけ間があく。

「……彼女って?」
「付き合っている女の人です」
「それはわかるけど。……もしかして、俺の家に来た時に傘を預けた人のこと?」
 
私は返事ができずに、うつむきながらうなずく。
彼女のことを問いつめたい気持ちと、聞きたくない気持ち。両方の気持ちがせめぎ合う。

「あの人は彼女じゃなくて……うーん……高校の時の同級生」