「ほら、やっぱりなんかあったんじゃん」
「なんにもないです」
 
それでも振り切って腰をあげようとするもお、ウソツキさんは、
「俺にも言えないようなこと?」
と追及してきた。

「言いたくないです」
 
これ以上涙を見せたくなくて、顔を背けながら答える。
ウソツキさんに勘付かれる前に、この場から離れて逃げだしたかった。

「あ、そ」
 
すると、ウソツキさんは、盛大なため息を吐いてそれだけ言った。

「あの……」
「なに?」
「離してください」
「なにを?」
「制服」
「やだ」
 
さっきから制服の肘のところが引っ張られたままで、私は半腰ながら立ちあがれずに、またペタンと腰をおろしてしまう。
けっこうな力で握っていたウソツキさんは、あいかわらず飄々とした表情のままだ。