こんなふうに、私が知らないウソツキさんの一面は、数えきれないほどあるんだろう。
そう思うと、彼の本名さえも知らない、この場だけの薄っぺらい関係に泣きたくなる。

「なんか、よそよそしいね、今日」
「そうですか?」
 
私はいつものベンチの端に座り、カバンを膝の上に持った。
普段通りにしようと思ったものの、無意識に背筋が伸びてしまう。

「ほら、なんかかしこまってる、ネコ」
「そんなことないです」
 
見透かされていることがはずかしくなり、ぶっきらぼうにそう答えると、
「楽しいご報告はないの? 今日は」
と、背もたれに体重をかけ、空を見あげながら尋ねるウソツキさん。

つらくて、苦い報告ならあるけれど、と私は心の中でつぶやく。