家に帰りつき、ベッドにうつ伏せで寝転がり、どうしようもない気持ちと格闘する。
フード越しに撫でられる頭も、手袋越しに触れられる顔も、パーカー越しに抱きしめられる体も、本当はちゃんと解っていたんだ。
直接触れられない歯がゆさと、直接触れてもらえない切なさを。
今日見た、ウソツキさんの手が彼女に触れる瞬間の場面。
どんなに焦がれても、あんな場面を私は作ることができない。
そして、彼女がいる以上、それを望むことも許されないんだ。
なんで、ウソツキさんは、あんなに優しくしてくれるんだろう。
なんで、ウソツキさんは、あんなに思わせぶりなことをするんだろう。
自分でマンションに通っておきながら、この胸を痛める原因を全部ウソツキさんにかぶせてしまいたくなって、私はまた嗚咽を殺しながら泣いた。