「なんで、こんな急に、また……」
 
しどろもどろになりながらも聞いてみる。
ウソツキさんは、いつも不意打ちで私に触れたり近付いたりするから心臓に悪い。

「リハビリ。ネコの」
「これで治るんですか? 本当に」
「治るよ」
 
そう言って笑いながら、前みたいにまた手を私の口元に回し、チョコレートのひと粒を口に入れようとする。
手と私の唇が触れないように、ゆっくりと。

「動かないでね」
 
口に入れられると、私は照れながらうつむき、モグモグと口を動かした。
なんだか、私をいたたまれなくさせるためのゲームみたいだ、これ。
 
背後から私の横顔を覗きこんで見ていたウソツキさんは、
「逆にエロいね」
と笑った。

私は今日ばかりはチョコの甘さがわからず、ただただ自分の顔の熱さとウソツキさんの耳元の声に翻弄されっぱなしだった。