ウソツキさん……ウソ……ついた。
 
大橋くんは、ものすごくバツが悪そうな顔で、すみませんでしたっ、と大声で謝り、深々と頭をさげる。

そして私に再度、「本当ごめんね」とひと言言い、キレイな回れ右をして逃げるように帰っていった。
なんだかこちらが申しわけないほど、すまなそうな顔をして。

「…………」
 
大橋くんが去ったあと、なにも言わないウソツキさん。

「ウソつき」
と小声で言うと、急に手袋越しに私の手を握って引っぱりはじめる。

「どこに……」
「屋上。いつもどおり」
 
エントランスに入り、慣れた手つきでエレベーターのボタン操作をするウソツキさん。
そのまま無言で五階まであがり、階段を上って屋上へ出た。