ウソツキさんのところに寄って帰ろう。
私は今日もまた、帰りながらそんなことを思っていた。

今日の出来事や今日思ったことを、なぜか全部残らず聞いてもらいたい。
それは毎日そうなんだけれど、なんだかいつも以上に、早くウソツキさんに会って話したかった。
 
あともう少しでマンションだという時。

「種田さんっ」
 
うしろから大きな声で名前を呼ばれて振り返る。
そこには息を切らした大橋くんが、膝に手をやりながら立っていた。

「大橋くん。家の方向、あっちじゃ……」
 
驚きながら、切羽詰まったような顔の大橋くんを窺い見る。

「ごめん。やっぱりなんか謝り足りなくて。ていうか、一対一でちゃんと話がしたくて、追いかけて走ってきた」
 
短く呼吸をし、汗をぬぐいながら真剣な目をする大橋くん。