「あっ!」
 
昨日の人だということはわかっていたものの、彼の頭を見て仰天してしまった。

「それ、私のっ」
「ああ、アンタのだったの? 残念。昨日落ちてたからもらおうと思ったのに」
 
四つ葉のクローバーのヘアゴムで、ちょんまげみたいに前髪を結んで飄々としている彼。
絶対私のだってわかってて、からかってつけている。

「返してください」
 
悪趣味な人だと思い、しゃがんだ格好のまま眉をひそめながら言うと、
「じゃあ、自分で取って」
と、おもむろにベンチの端に座り、腕組みをしながら私を横目で見る彼。

私は、なんでそんなことをしないといけないんだ、と思いながらも、早く返してもらって帰りたいから仕方なく立ち上がり、鼻から息を吐く。
そして、一歩歩み寄り、そっと手を伸ばした。