「種田さんっ」
 
数日後の昼休み。二週間以上ぶりに、大橋くんが話しかけてきた。

「……はい」
 
直接、しかも通る声で呼ばれた以上、できれば話したくなかった私も渋々返事をして振り返る。

「話があるんだけど、来てもらってもいい?」
 
大橋くんは緊張した顔で、意を決したかのようにそう言った。

「ちょっと待って、大橋。ここでは話せないような話なの?」
 
私が返事をする前に、バナナオレのパックジュースを飲んでいるノンちゃんが間に入ってきた。
私と大橋くんの本当の事情を知らないのに、結構、鋭い視線で牽制してくれている。

「……うん、できれば」
 
ノンちゃんの過剰な反応にひるみつつ、大橋くんはすまなそうに言った。