「いいんです、私には縁のないことだから」
 
どうせ、男の人と付き合えないんだから。

「本当にそう思ってんの?」
 
ウソツキさんが、じっと私を見つめてそう言った。
無造作な前髪が風で揺れている。

なんとなく変わった空気とすべてを見透かすような目に、私はべつに見透かされて困ることなんてないのに、なぜかたじろいでしまう。

「だって……」
 
ふっとウソツキさんのむきだしの右手が伸びてきて、私の唇の前で止まった。

触れるか触れないかのギリギリの距離。
ウソツキさんの緩くグーにしている手の親指の体温が、数ミリの隙間を縫って唇に伝わってきた気がした。
 
あ、触れ……る?

「ハハ。固まってる、ネコ」
「……っ!」
 
その瞬間、一気にはずかしさが体中を巡った。