「うーん、ないな」
 
おかしいな、ここだと思ったんだけど。ここにないってことは、家までの歩道か、家に帰ってから落ちてしまったのだろうか。

「あ、女子高生再び」
 
膝をついてもう一度ベンチの下を覗きこんでいると、ちょっと離れたところから聞き覚えのある声が聞こえた。

「素敵な格好してんね、アンタ」
 
四つんばい状態で、制服のスカートがヒラヒラしていることにハッと気付いた私は、慌てて頭をあげる。
その瞬間、ゴンッと真上のベンチ裏にぶつかり、勢いがよすぎたためか、プラスチック製のベンチが少しだけ浮いた。

「ふはっ」
 
クスクス笑いながら近付いてくる足音。
白いスニーカーが目の前まで来た時、私は頭を押さえながら涙目でようやく顔をあげる。