「ウソツキさん、ウソツキさん、ウソツキさんっ!」
 
夕方。
マンションの階段を駆け上り、勢いよく屋上の扉を開けて叫ぶ。

「はいはい。そんなに何度も呼ばなくても」
 
ベンチに寝転んでいたウソツキさんが、のそりと体を起こし、頭を掻きながらこちらを向いた。

「頑張った! 頑張ったんです、私」
 
聞いてほしい。
そして、その頑張りを認めてほしい。
その一心でウソツキさんに駆けよる。

目の前まで行くと、ようやくなんのことか思い至ったらしいウソツキさんは、
「そう、頑張ったの。えらいえらい」
と、手を広げて立ち上がった。

私は満面の笑みで、顔とか首を直にくっつけないように不格好に抱きついた。
 
テストで百点を取ったことを褒められたみたいだ。
嬉しさと誇らしさで胸がいっぱいで、子どもがお母さんに抱きつくみたいに自然に、ウソツキさんに飛びこんでいた。