「わっ!」
 
もう片方の手を引かれた私は、今までで一番男の人に密着した体勢になってしまった。
急なことに心臓が跳ね、軽くパニックになる。

でも、私の頭を胸に寄せている手で、ポンポンとあやすようになだめるウソツキさんのぬくもりに、なぜか自然と心が落ち着いてきた。
そしてそれが“心地いい”に変わる。

「一週間、ずっとひとりで悩んでたの?」
「……はい」
「なんで別の日に相談しにこないわけ?」
「だから風邪で」
「今日は学校行ったんでしょ? 制服着てるし。帰りにここに寄ればよかったじゃん」
「だって……」
 
頭上からと同時に、ウソツキさんの服越しに体から響いてくる声。
その声の温度に心をほぐされながらも、彼女と鉢合わせて自分が見放されたような気がしたから、なんて素直には言えなかった。