「あれ?」
 
カバンの中にゴソゴソと手を突っ込んで掻きまわす。
帰り際まで髪をおろしていたから気付かなかったけれど、お気に入りのヘアゴムがない。

昨日、屋上のベンチに横になっていた時にはつけていたのに、家に帰ってから取った覚えがないということは……。

「……たぶんあそこだ」
 
とりあえず学校を出て、いつもの帰り道を歩きながら考える。

私は部活に入っていないから、HRが終わるとすぐ家に帰る。
あの三人はみんな部活に入っているし、家の方向もちがうから、基本ひとりだ。
家までは徒歩二十分くらいで、そのちょうど間に例のマンションはあった。

「うーん」
 
どうしよう。
また昨日の変な人がいるかも。
でも、お気に入りなんだよね、あの、四つ葉のクローバーのビジューがついたヘアゴム。
誕生日に、お兄ちゃんがプレゼントしてくれたものだし。