「で? なにがあったの?」
 
いつものベンチに座ると、ウソツキさんが口を開く。

「なんでですか?」
「ぱったりここに来なくなったから、ネコ」
「風邪引いてたんです。学校も休んでたし」
「それだけ?」
「それだって立派な理由ですけど」
「なに、牙むいてんの?」
 
意味がわからない。
ウソツキさんが私の家に来たのも、ここに連れてこられているのも、こんなふうに問い質されているのも、いまだに手をつないだままなのも。

「先週、うちに来たでしょ?」
「…………」
「傘はいつでもいいって言ってたのに。なにか聞いてほしいことあって来たんじゃないの?」
 
少しだけ優しくなった声のトーン。
大人の顔を覗かせるウソツキさんに、つながれていないほうの手で制服のスカートをぎゅっと握る。

あの彼女から聞いたんだ、私が来たこと。
そう思ったら、胸にじわりと苦さがにじんだ気がした。