「なんで、そんなにチョコばっかり。具合悪くなるぞ」
「だって……」
 
また涙腺がゆるみだす。

「とにかくここに座って。話をしよう」
 
あきれたような困ったような顔をして、突っ立ったままの私をベッドに座るよう促すお兄ちゃん。
私が座ると、となりにゆっくり腰をおろし、私の顔を覗き込みながら頭を撫でてくれた。
昔から、お兄ちゃんの手だけは大丈夫だった。

「なんかあった? 学校で」
 
お兄ちゃんは優しく聞いてくる。
心配をかけたくなくて少しだけためらったけれど、私は小さくうなずいた。

「蕁麻疹、出たのか?」
 
この問いには、ぶんぶんと頭を振る。

「そんなんじゃないけど」
「じゃあ、どうしたの? いじめられた?」
「ううん」
 
なかなか話そうとしない私に、お兄ちゃんは鼻で息を吐き、
「わかったよ。なにがあったかはこれ以上聞かないけど、とりあえずチョコの暴食はやめること」
と、私のおでこをペシリと軽く叩いた。