あそこなら防音でとても静かだし、誰も来ないから自分のペースで集中できる。

そして課題を終わらせたら先生の机の上にノートを置いて、そのまま一人で家に帰ろう。


「……あ」


だけど、音楽室に入ってすぐ、失敗したと後悔した。

そこにはまた先約……ううん、陸斗くんがいて、眉根を寄せながら突然現れた私を眺めている。

彼の言いたいことは痛いほどよくわかる。

わかった私はまた怒られる!と焦ってしまい、反射的に後ろ手で扉を閉めて、言葉を失くして固まった。


「……またかよ」


呆れたように息を吐いたのは、窓のそばに立っている陸斗くんだ。

どうやら今日は寝ていなかったらしい。

彼は窓の外を向いていた身体をこちらに向けて、窓枠に背を預けながら見せ付けるように溜め息を溢した。


「なんで毎日、ここに来るわけ?」


嫌々、といった風に尋ねる彼とは今日も、教室では一度も会話をしていない。

席が隣同士といっても共通の話題もないし……何より陸斗くんとはなんとなく気まずい気持ちもあって、敢えて目も合わないようにと避けていた。