「あ、朝陽、何言って……っ」
「く……っ。菜乃花って、すぐ赤くなるよな。そういうとこ、可愛くて、ほんと癖になる」
「な、な……っ。朝陽が、からかうからでしょ! もうホントにやめて! こういうことするなら手、離すっ!」
ぶんぶん、と繋がれている手を振れば、今度こそ逃さないとばかりに貝殻のように繋ぎなおされた。
所謂、恋人繋ぎだ。これまで一度だって、こんな風に手を繋いだことはなかったのに……。
もう、何がなんだか、どうしてこんなことになってるの?
「ダメ。離さない」
「……っ」
「菜乃花が可愛いこと言うから悪いんだ」
そう言うと朝陽はフイッと視線を前へと戻してしまった。
見上げた先の彼の耳は、ほんのりと赤く染まっていて……。
それが夏の太陽のせいではないということは、私でもわかる。
じんわりと、手には汗が滲んだ。
早鐘を打つように高鳴る心臓は、もうどうにも収まりそうにもなかった。