「だから、朝陽のことを好きだなんて……朝陽には、絶対、言えない」

「…………」

「わ、私が好きだなんて言ったら、朝陽を困らせるだけだし……。何より今度こそ、朝陽は私から手を離せなくなっちゃう。私は──今以上の何かを望んだら、ダメなの」


涙を払うように、小さく笑った。

『こうして"普通"の生活ができるだけ、菜乃花はきっと幸せね』

それは、お母さんの口癖だ。

今が、幸せ。障がいを抱えている私がこれ以上の何かを望んだら、罰が当たってしまうかもしれないという戒めの言葉。


「だ、だから、朝陽が私を好きとかもないよ。そう見えるのは今話した通り、私のせいってだけだから……」


陸斗くんは無表情のままただ黙って、私の話を聞いていた。


「ご、ごめんね、急に……こんな話、しちゃって」


けれど今更、話す相手を間違えたと思っても遅かった。

急に我に返った私は恥ずかしさと後悔に胸が覆い尽くされて、今すぐこの場から逃げ出したい気持ちに駆られた。