「だけど、朝陽は……朝陽だけは、何があっても、何があろうと、いつも私の味方でいてくれた」


『菜乃花は、菜乃花だから。俺はいつも菜乃花の味方だから』

本当は朝陽だって、女の私と手を繋いで歩くなんて嫌だったに決まってる。

もしかしたら朝陽も、クラスの男の子から冷やかされたり、嫌な思いもたくさんしてきたかもしれない。

それでも朝陽はいつだって、私の前ではひとつも嫌な顔を見せずに、私の手を離さなかった。

いつも、どんなときでも。

『私の味方』だと言って、私の隣で笑っていてくれたんだ。


「朝陽は……優しいから。優しすぎて……ダメな私を、一人にできないだけなの……っ」


目の前が滲んで見えなくなって、必死に唇を噛み締めた。

朝陽は、優しい。

優しいから、あの日……朝陽のお母さんに言われた言葉を、未だに守り続けてくれている。

もしかしたら自分でも、気が付いていないのかもしれない。

朝陽が私のそばにいるのは、朝陽が持つ責任感からくる、義務的作業なのだということを。