『話してくれて、ありがとう。私で良ければ、いつでも話を聞くからね。私にとっては、なのちゃんも大事な娘みたいなものだもん』

覚えているのは、朝陽の家のリビングで泣きながら話している母の姿と、そんな母に寄り添い慰める、朝陽のお母さんの優しい声。

『朝陽。なのちゃんのこと、守ってあげてね』

諭すようにそう言った朝陽のお母さんの言葉に、まだ小学生でなんのことかもわからなかっただろう朝陽は、『わかった』と答えてから、頷いた。

そして、その日から外を歩くときは決まりごとのように私たちの手は繋がって、朝陽は学校でも常に私のことを気に掛けてくれるようになった。

私が衝動的に手を振り払ってしまっても、根気強く何度でも、朝陽は私の手を取り続けた。

『菜乃花。何かあったら、俺に言って』

温かい、朝陽の手。

最初はただ、朝陽がそばにいてくれることが心強くて、嬉しかった。

友達と揉めたときには、朝陽が話しを聞いてくれた。

学校生活で困ったときにも、朝陽は優しく手を差し伸べてくれたんだ。