「……なんで、アンタじゃダメなんだよ」

「……私ね、ADHDなの」

「ADHD……?」

「うん。発達障害のひとつなんだけど……みんなが普通にできることが、私には時々、すごく難しかったりする」


そこまで言って小さく笑うと、私は足元へと視線を落とした。

この学校内で私がADHDであることを知っているのは、一部の先生たちと、朝陽とリュージくん。

高校に合格してから、お母さんが何かあったときのために先生たちには話しておこうと決めたからだ。

だからといって、学校側から何か特別な支援をしてもらっているわけではない。

あくまで何か困ったことがあったときには手を差し伸べてもらえるように。そういう、配慮の仕方なのだ。

だから学校生活だって、みんなと同じように送っている。

クラスメイトも私がADHDであることには気が付いていないし、ただの忘れ物が多い、コミュニケーションが苦手な変わった子くらいの認識しかないだろう。