「……菜乃花(なのか)。また、そこにいたのか」


窓の外で揺れる新緑。

バカな私を隠してくれる、アイボリーのカーテン。

ぽかぽかと暖かい、初夏の陽気。

放課後、ぼんやりと窓の外を眺めていた私を、世界で一番大好きな声が呼んだ。


「商業科の教室で待ってろって言ったろ」

「だって、ここが世界で一番落ち着くんだもん」


カーテンの隙間から、ひょっこりと顔を出して答えると、今日も呆れたような表情をした朝陽(あさひ)が、小さく溜め息を吐く。