「私は……。わ、私が」
「アンタが、何?」
鋭い声が、答えを急かす。
私は。私が──。
「……私が。朝陽を見えない鎖で、縛り付けてるだけ」
「見えない鎖?」
「そう……、鎖」
唐突な私の言葉に、一瞬驚いたように陸斗くんが目を見開いた。
──見えない鎖。
咄嗟に口をついて出た言葉だけれど、やけにしっくりくる表現だ。
それがなんだか面白くて、私は握り締めた拳から力を抜くと、フッと口角を上げて笑った。
「鎖って、どういうことだよ」
「そのままの意味だよ」
抑揚のない声で答えれば、陸斗くんの眉間にシワが寄る。
「簡単に解けないくらいに絡まってて、もがけばもがくほど深く食い込む……そんな、怖い、鎖」
言い切って、数回瞬きを繰り返した私は震える息を吐き出した。
鼻の奥がツンと痛んで、喉の奥は痺れている。
握り締めた手のひらには爪が食い込み、鈍い痛みを知らせていた。