「へぇ?」

「……何?」

「じゃあ、その、"私達のこと"ってやつ、教えてくれる?」

「え……」

「ただの幼馴染だっけ? 少なくともアッチは、そんな風に思ってないんじゃない?」


けれど私の言葉に少しも怯んだ様子のない彼は、徐ろに立ち上がった。


「なんとも思ってないやつの為に、あそこまでキレるかよ」


そしてそのまま、私に向かって歩いてくる。

……ほんとに、なんなの?

ギクリとするというのは、こういうことを言うんだろう。

思わず一本後ろに足を引いたけれど、すぐにカーテンと窓に背が触れて、逃げることは叶わなかった。


「で、アンタもどうせ、アイツのこと好きなんだろ? アイツ、ムカつくけどそれなりの容姿だったし」

「そ、それは……っ」

「だったら両思いで大団円じゃん。それなのになんで、そんな必死になって否定するんだよ」


私を囲うように伸びてきた手が、背後で揺れるカーテンをギュッと掴んだ。

両サイドを手前に引かれ、繭のように包まれた私の視界は、陸斗くんと温かなアイボリーの世界に閉じ込められる。