ただ、家が隣同士ってだけなのにね。
私と朝陽は、ただの幼馴染で……それ以上でも、それ以下でもないんだから。
「……音楽室、行こうかな」
昇降口に向かって歩き始めていた足を止めて、私はふと、振り返った。
いつも、放課後になると足を運ぶ【第三音楽室】。
今日は特に、第三音楽室に行く用事もないのだけれど……。
なんとなく。なんとなく、今、あの場所に行きたくなった。
そう思ったときには、足が自然と音楽室に向かって、歩きだしていた。
* * *
「……あ」
だけど、まさかここに来て後悔することになるだなんて、思ってもみなかった。
ぼんやりと長い廊下を歩いて、ぼんやりと音楽室の前で足を止めて……ぼんやりと扉を開けて中に入った私は、思わずその場で固まった。