「あ、あの、」
「……りっくん」
「え?」
「っていうか、りっくんじゃね!?」
その時、風船のように弾んだ声が、一瞬で重い空気を薙ぎ払った。
振り向くと、目をキラキラと輝かせたリュージくんが陸斗くんへと目を向けていて、思わず目を丸くする。
……りっくん? それって一体、誰のこと?
なんて、私も朝陽も尋ねる余裕すらなかった。
陸斗くんも訝しげに眉根を寄せて、リュージくんをどこか疑心暗鬼の目で見ている。
「俺だよ、俺! 小学生の頃、家が向かいだった榎里 隆司!」
「榎里隆司……? って、まさか……。え、リュウ? 嘘だろ?」
「そう! それ! うわー、りっくんにリュウって呼ばれるの、何年ぶりだよ! 確か、りっくんが引っ越して以来会ってないから、八年ぶりか!? まさか、同じ高校にいるなんて思わなかったわ!」
興奮した様子のリュージくんは、太陽みたいな笑顔を浮かべて嬉しそうに手を叩いた。
りっくん、リュウ、八年ぶり。
あまりに突然のことで、ついていくのがやっとだ。