「……うるせー」
「……あ」
開け放たれた窓から迷い込んできた風に、静かに揺れる栗色の髪。
不機嫌そうに眉根を寄せた彼は片足を椅子の上にのせて、クシャリと右手で自分の髪を持ち上げた。
朝陽とよく似た、細くて長い、綺麗な指。
数秒の間を空けてから、徐に彼が顔を上げる。
そうすれば朝陽と同じ、色素の薄いブラウンの瞳が私を射抜いて、心臓がドクリと高鳴った。
「り……陸斗くん?」
隣の席の、山田陸斗くんだ。
あの席替えの日以来、結局彼とは一度も言葉を交わすことはなかったけれど、彼は間違いなく、毎日のように顔を合わせている私のクラスメイトだった。