だけど、その中でも昔から……朝陽は理科全般が得意だった、というか好きだった。

小学生の頃、テストでは毎回ほとんどクラスで一番。

中学に上がってからは、よく学年で一番になっていた。


「昔から、虫とか生き物とか、好きだしね」


子供の頃の朝陽を思い出してクスクス笑うと、隣の朝陽もフッと優しく表情を緩めた。


「そういう菜乃花は、虫とか生き物とか昔から苦手だよな」

「だって、怖いんだもん。見るだけでゾワゾワしちゃうから、仕方ないよ」


昔は虫が苦手なことを、朝陽にバカにされたんだ。

そんな、思い出話に花を咲かせながら歩いていると、先頭を歩いていたリュージくんが不意に足を止めて押し黙った。


「リュージくん?」


視線の先のリュージくんは音楽室の扉の前に佇んで、なんだか狐に摘まれたような顔をしている。

ほんの少し遅れて追いついた私が声を掛けると、リュージくんはハッとしてから眉根を寄せて、音楽室の中を指差した。