「トイレも古いから、商業科の女の子とかはよく、隣の第二棟のトイレを使いに行ってるよ」

「へぇ〜。まぁでも、なんていうか、昭和レトロっていうの? ジャパニーズホラー映画とかには、使われそうな建物だよな」


褒めているのか貶しているのか、リュージくんは興味深そうに頷きながら長い廊下を歩いていった。

理科室に、理科準備室。

ふと、隣に目をやると朝陽は通り過ぎるそれらの教室を何気なく眺めていて、そういえば……と、懐かしいことを思い出した。


「朝陽は、昔から理科が好きだよね?」

「ん?」

「小学生の頃から、朝陽は理科が得意だったなぁと思って」


私が前を向いたまま小さく笑うと、繋がれた手にそっと力が込められる。

昔から、勉強の良くできた朝陽は基本的には全教科、高得点の超成績優秀者。

そうでなければ競争率の高い特進科に合格なんてできないし、当然といえば当然なのかもしれないけれど私とはまるで頭の出来が違うのだ。