「おー、山田、榎里(えのさと)……あと、月嶋。三人、ちょうど良いところにいた」
ぼんやりと、朝陽とリュージくんのやり取りを眺めていたら、不意に背後から声を掛けられた。
振り向くと校内清掃の担当の先生がいて、思わず首を傾げてしまう。
「ちーっす。先生、俺らに何か用っすか?」
いち早く反応したのは、榎里……と呼ばれた、リュージくんだ。
「おお。お前ら、三人で第三音楽室の掃除、やってきてくれないか? あそこは最後に廻そうかと思ってたんだが、後々取っておくと逆に忘れそうだからなぁ」
──第三音楽室。
そこは、第三棟にある音楽室で、私と朝陽が放課後の待ち合わせ場所に使うあの場所だ。
私が好んで足を運ぶ場所であり、毎回、朝陽が呆れながら私を迎えに来てくれる場所のこと。
「それじゃあ、よろしくなぁ。そんな広い教室じゃないから、三人いれば十分だろ」
簡単な指示を残して、先生は別の子たちが清掃している輪の中へと消えていった。