『菜乃花、俺……』


そんなある日、朝陽に今私達が通っている高校を受験するつもりだと告げられた。

朝陽が通うこの学校の特進科は、県内でもトップクラスの有名大学への進学率を誇っている。

このとき私は初めて、朝陽と離れ離れになることを覚悟した。

ついに、私は、私。朝陽は朝陽が本来歩むべき道を歩いていくことになるのだと、諦めかけたのだけれど──。

『普通科と、商業科……』

今、私達が通っている学校には、朝陽の希望していた特進科とは別に、普通科と商業科が併設されていたのだ。

特に商業科は、私の成績でも受験することが可能で、それなりの歴史もある科だった。

商業科に入ることができれば、朝陽と一緒にいられるかもしれない。

授業は別々でも、朝陽の近くにいられる。

お陰で目標ができた私は必死に、本当に必死に勉強して、なんとか朝陽と同じ高校の商業科に合格することができた。

合格発表の時には、思わず泣いてしまったことも覚えている。