「俺と同じ山田なら、案外イイ奴だって可能性もあるかもしれないぞ?」
面白そうに、朝陽が笑う。
朝陽は……ズルい。ズルいくらいに優しくて、カッコいいから、私には手に負えない。
「……ありがとう、朝陽」
「俺は、何もしてないけどな」
再び面白そうに笑った朝陽が前を向く。
たったそれだけのことなのに胸が高鳴って、苦しくて、たまらなかった。
朝陽といると安心するのに、時々どうしようもなくドキドキして、自分が自分でなくなるような気持ちになる。
今すぐこの場から逃げ出したいのに、離れたくない……なんて、矛盾だらけの自分になる。
「っていうか、カーテンの中、暑いな」
「まぁ……もうすぐ、夏だからねぇ」
「夏か……早いな」
どこか懐かしむように呟いた朝陽は窓枠に手を置いて、空を仰いだ。