「女同士って、揉めると面倒くさいだろ」


小さな世界に、二人きり。

思わずそんな錯覚に陥って、心臓が甘く高鳴り、息をするのも苦しくなった。


「だから、陸斗って奴はそうならないように、菜乃花を助けてくれた」

「……朝陽の、考えすぎだよ」

「かもな。でも、菜乃花が笑っていられるなら、なんでもいい」


そこまで言うと、朝陽は私の髪を優しく撫でた。

先ほど朝陽が、私の話を聞いてご機嫌になった理由は、これだったのだ。

方法と言い方はどうであれ、陸斗くんのお陰で私は面倒なことに巻き込まれずに済んだ。

ハズレ席にも行かずに済んだから……朝陽は、ご機嫌だったのだ。