「ごめんなさい、私……勘違いして……」


ぽつりと零すと、朝陽が困ったように小さく笑った。


「もういいよ。結局、何一つ肝心なことを言わないで、菜乃花を振りまわしてた俺が悪かったんだ。思わせぶりなことだけ言って、菜乃花を混乱させているのも自覚してたし……」

「そんな……」

「だけど、そうでもしなきゃ、抑えきれなかったんだ」

「……っ」

「一秒でも長く、菜乃花に俺を見ていてほしかった。俺はずっと──菜乃花のことが、好きだったから」


一歩、足を前に踏み出せば、アイボリーのカーテンが誘うようにゆらりと揺れる。

──好き。

ハッキリと朝陽の口から伝えられた言葉に胸が震えた。

ずっとずっと、私が朝陽に伝えたかった言葉だ。


「好きだよ、菜乃花」

「……っ」

「だけどもう……好きじゃ、足りない」


その言葉を合図に、私は朝陽の胸に飛び込んだ。

一際大きく揺れたカーテンが、私達のことを包み込む。